WES News 32 2002年12月
全国大会(三重大会)参加報告
-日本の秋を満喫-
第45回建築士全国大会が、10月17日、18日の両日、伊勢市で開催され、女性委員会から、大川、田隝、酒井が参加しました。 同時に、日本建築士会連合会創立50周年記念として、連合会の表彰式が行われ、連合会会長賞に大川友理枝さんが表彰されました。 二日目に「こだわりの夕べ」として、会場から伊勢神宮内宮の鳥居前町「おはらい町」へ移動し、グループに分かれ懇親会がありました。 「おはらい町」は五十鈴川に沿って宇治橋から参宮道800m程に、土産物屋、旅館などが並び、昭和54年からのまちなみ保全運動で、 保全と再生がなされ観光客で賑わっておりました。 翌日の自由見学会では、内・外宮の参拝、百余年ぶりに建て替えられたばかりの外宮神楽殿で雅楽が流れる中、巫女さんの舞を観賞し、 神聖この上ない空気に包まれて日本の秋を満喫して来ました。(酒井凉子)
神奈川県建築士会創立50周年記念式典
平成14年10月25日(金)にホテルニューグランドに於いて標記の式典が盛大に開催されました。 県下から300余名の参加者があり、そのうち女性会員は20名でした。記念品として「かながわ建築ガイド」が参加者に配られました。 また50周年記念誌には女性委員会も10周年を記念して10年のあゆみ・先輩からの寄稿を載せました。みなさんのお手元にも届いていると 思いますので是非ご一読下さい。 第1部の記念式典に引き続き、第2部では連合会制度委員会委員長の藤本昌也氏から「建築士像の将来展望」について建築士制度の 取組みの講演がありました。この建築士制度については神奈川県建築士会でも検討委員会が設置され「CPD・専攻建築士制度」 の検討がなされています。第3部はレインボーボールルームにて祝賀会が会場いっぱいのひとで賑やかに行われました。(大川友理枝)
ホテルニューグランド
扉をあけるとそこはヨーロッパのかおり漂う格調高い世界がひろがります。開業当初そのままの雰囲気を残すこのお部屋は、 Ball Room(舞踏室)として当時は横浜の大人たちが集う社交の場でした。 レインボーボールルームの虹色の照明が照らしだす丸みを帯びた天井は、当時の漆喰職人による最高傑作といわれました。 そのほか、現代では成しえない、ディテールのあるもの造りの成果を多くみつけることができます。 「横浜市認定歴史的建造物」に指定されています。(佐藤陽子)
福祉部会の活動から
バリアーフリー住宅研究会
第3回勉強会 [福祉用具のかかわりと住宅改造]
9月14日(土) 参加者19名
講師に、かながわともしびセンター バリアフリー普及課の金山京子氏をむかえお話をしていただいた後、
福祉用具の展示場に移動し、特に車いす・ベッド・ポータブルトイレの説明をしていただきました。
実際触れたり、試乗したりと体験でき、福祉用具について理解することができました。
福祉用具のお話をきいて・水谷 美濃
福祉用具ときくと最初は何か特別なものに感じていましたが、私たちが普段使っている眼鏡のように日常生活の営みを支えている ものということがわかりました。一口に福祉用具といってもその種類は多く、誰がどの場面でどのように使うかによって 使われる用具が変わることの説明を受けた時、利用者の生活基盤のうえに導入されるものであって、一人一人に適したものである べきなのだと思いました。従って、単に車イスを使うから部屋の寸法をいくつとるということではなく、利用者がどのような生活を望んでいるか を把握したうえでのスペース計画をすべきなのだと改めて考えさせられました。 安全・快適な環境を提案することは、その人の身体面だけでなく主体性や自立性を支え社会参加を促すことでもあると思うので、 より良い提案をする為に福祉用具に関心を持ち続けたいと思います。
展示場にて
第4回勉強会
[介護支援専門員による住宅改造の考え方]
11月9日(土)参加者18名
社会福祉士・介護支援専門員の原田聖子氏に基本的な介護保険の内容から介護支援専門員の業務、住宅改造のかかわり方まで、
実務のお話を聞くことができました。(勉強会担当:雨森 菊地 横溝)
※勉強会に関するお問い合わせ・申込は下記へどうぞ
FAX 045-201-0784 建築士会女性委員会
Eメール josei@kanagawa-kentikusikai.com
高齢社会の住まい・まちづくり研修会
今年は会場を藤沢市に移して開催しました。8月に座学を藤沢産業センターで、福祉用具の見学会をかながわともしびセンターで、 9月にワークショップを神奈川リハ病院と七沢病院で開催しました。
活気にみちたワークショップ・間木 宏美
毎年この研修会は、法制度、高齢者の身体的特徴などの講義を受け、福祉機器の展示を見学した後、事例 にもとづいた改修案を作成していくワークショップと、数日間かけた盛りだくさんな内容です。特にワークショップでは、班ごとに話合って改修案 をまとめていくのですが、建築関係、福祉、医療関係の人たちがひとつのグループになっているので、それぞれの知識を出しあい、 お互い知らない事を教えあったりと、いつも活気に満ちていると思います。異業種の人達と円座になって、一つのことに取り組んでいく ことというのはあまりないと思うので、このワークショップはとても良い機会だと思います。
平成14年度福祉のまちづくり研修会
-横浜市職員との合同研修会-
福祉のまちづくり研修に参加・八重野 みどり
11月20・22日に、市職員・建築士会・他関係団体の合同研修が行われました。 まちづくり条例の説明や講演を挟んで、 車いす・高齢者疑似体験、グループディスカッション、発表という盛りだくさんの内容です。初めての体験だったので、 ほんの少しの水勾配ですら斜めに進んでしまう車いすや、交差点の信号を見上げるだけでも拘束を受ける身体に戸惑い、 寒風に吹かれながら緊張と運動量とで汗ばんでしまいました。また、グループディスカッションは関内駅という具体例を前に、 実際に計画に当たった市職員の方も交えての、大変興味深いものでした。「誰かのためにしてあげるのではなく、 自分の近い将来のために整備するんだ」と一人の職員の方が言っていたのが、今も強く心に残っています。
他団体事業への協力
高齢者文化祭に参加
平成14年9月14・15日神奈川県社会福祉会館に於いて県民に広く高齢者福祉について関心と理解を深める目的で 神奈川県社会福祉協議会・かながわ長寿社会開発センターが開催しているイベントに女性委員会として協力。 神奈川県建築士会のPR・住まいの相談・高齢者・障害者の住宅改造と子ども分科会のパネル展示をして来場者と アンケートを通じて交流を計りました。(大川)
高齢者と建築士の接点・野地 春子
初めて「高齢者文化祭」に参加しました。いままで、こういった催しに建築士が関わる事さえ考えてもいませんでした。 今回はご相談もほとんどなかったのですが、一件お話した際に感じた事があります。一般の方は住宅に関して何かしら相談したくても、 どこへ行って誰に相談したらよいか分からないのです。これだけの数の建築士がいて、関わる機会がまったくないのは建築士としても とても残念です。高齢者に限らずもっともっと多くの方と接する機会が欲しいと思います。
高齢者向け住宅改造施工業者登録制度がスタート
本年より(社)かながわ住まい・まちづくり協会が各地域の相談から施工へ導く方法として、施工業者を対象とした 高齢者向け住宅改造についての講習会を開催し、受講された施工業者を登録して相談者に情報提供できるよう標記制度を実施。 この講習会の講師として女性委員会が参加協力しています。
アドバイザーの視点から・菊地 紀代子
建築士会女性委員会から二名の建築士、理学療法士、福祉の方も一名ずつアドバイザーとしてワークショップに参加しました。 提案図作成にあたり、身体機能や日常生活を把握するグループ内での話し合いに苦労している様子でした。 便所・浴室・寝室・玄関等各々の部位の建築的な整備に目が行き、提示された予算でどこまでの住宅改修が可能かに、 話が集中しているグループが多かったと思います。家族全員の生活の流れを連続的に見て、細やかな配慮がほしいと思いました。
福祉用具プランナー研修に協力
今年は平成14年9月17・18・19日にかながわともしびセンターで、また11月3日には(社)日本作業療法士協会が開催した、 いずれも(財)テクノエイド協会主催の福祉用具プランナー養成研修会の住宅改造のカリキュラムを女性委員会が担当しました。
企画部会の活動から
実践住まい塾 partⅡ エコハウス
エコハウスには様々な要素・手法がありますが、今回は要望の多かった「屋根緑化」をテーマにしました。 屋根緑化の見学会も最近はかなり開かれていますが、住宅ではあまりなく、住宅の屋根緑化の現状を知るためにも見学会と設計者を招いての 勉強会を企画しました。
●第1回勉強会・9月27日(金)
講師に綜建築研究所代表中林由行氏(環境共生住宅推進協議会技術顧問)を招いて、「屋根緑化の手法と現状」について講演いただきました。 現状のまま進むと50年後には食料もエネルギー資源も枯渇してしまうという、地球の危機状態から環境との共生の必要性を説かれました。 屋根緑化の効果は大気の浄化や建築物の熱環境改善効果・騒音低減効果・ヒートアイランド減少効果等々。 植物は雑草が生育できないほど過酷な条件で生きられるものを選定すること。施工は防水・防根が命。維持は灌水と施肥が問題等、 いろいろ学ぶことができました。 講演のあとはフリートーキングで参加者も各自のエコハウスへの取り組みを紹介。次回は中林氏が設計した 「駒岡の家」を見学することで閉会しました。(稲垣)
実践住まい塾 partⅢ 木構造
阪神淡路大震災を機に、木造建築物は耐震性、防火性の一層の向上が求められてきました。これについては、新技術、 新素材が開発されるなど、様々な可能性が広がりつつあります。また、改正された建築基準法に適合する構造設計の手法なども、 建築士としてはぜひマスターしたいところです。 そんな訳で、実践住まい塾partⅢは木構造です。第1回は1月に基礎編を、第2回は3月に応用編を予定していますが、 開催に先立ちアンケートを行い、できるだけ皆さんが興味のある研究テーマで実施したいと思っています。(広岡)
研 究 部 会
子どもの生活環境分科会は
今とってもホットです
「あなたがつくる課外授業」
7月の全建女の大会で子どもの居場所(地域編)について発表して以来、住まいの中での子どもの居場所や家族との関係について、 考察や意見交換を重ねています。それと並行して、子どもたちへ建築の楽しさを伝えたい、子どもたちと一緒に住まいや街を考えたいという 思いも高まり、外部へ発信できる企画書(総合学習プログラム)づくりにも取り組もうとしています。住まいは生活の基盤であり、 人格形成にも大きな影響を及ぼしているといわれています。感性の豊かな子どもの時から、住空間や生活についての関心や理解を深めていく 必要があると思います。すでに建築家による学校教育実践の試みが、進んでいる地域もありますが、女性建築士ならではの課外授業の方法も 探ってみたいと思います。集いでは、子どもたちに住空間や家族を考えるきっかけになる学習プログラム作りのワークショップを予定しています。 育児のために仕事から遠ざかってしまっている人や、建築のプロとして子どもたちへのメッセージを胸に抱いている方々、 この機会にぜひ参加して、日頃の考えを表現して下さい。(浅見美穂)
こどもの絵から
WESフォーラム
横須賀にある昭和初期の建物
-日本基督教団・上町教会(めぐみ幼稚園)-
1ヶ月程前、保存か取り壊しかで話題になった皇后さまの生家、旧正田邸。 昭和8年に清水組によって建てられたとのこと。 結局は取り壊されることとなってしまいましたが、横須賀にも昭和初期に建てられた建物があります。幼稚園が併設されたこじんまりとした 教会で、70年近く経った今日でも、当時の姿を残しており、地域の人々に親しまれています。米国人建築家M・ヴォーリズの弟子、 横田末吉の作品といわれていますが、赤い切妻屋根と、当時アメリカから輸入されたとみられる北米産の松を使い、 白く塗られた美しい下見板貼りの礼拝堂です。もうひとつ、この教会には大正時代に作られたと思われるリードオルガンがあります。 勿論今でも現役で、美しい音色を出して、シーズンごとにリードオルガンの伴奏による様ざまのコンサートが催されています。 このような環境の中で、幼い日々を過ごしている園児たちにとって、なんと幸せなことと、うらやましく思う次第です。(江藤 茂代)
同潤会大塚女子アパートを見学して
昭和5年に建てられたこの建物は茗荷谷駅前に、その存在を誇るかのようにそびえています。玄関入り口で都の職員の方から、 中で行方不明にならないようにと番号札を受け取りながら、ここの居住者でもあった戸川昌子氏が大塚女子アパートを舞台に書いた小説 “大いなる幻影”がふと思い出されました。中は薄暗く懐中電灯を片手に、各階個室、5階洗濯場、6階日光浴室、地階浴室などを見学しました。 その時代に自立して生きる独身女性達が個を大切にしつつもお互いに心の結びつきを持って暮らしていた様が思い描かれます。 70年も前にこの様な共同住宅が建てられたことは建築史上大変意義があると保存再生に向けて建築家などを中心に “旧同潤会大塚アパートメントを生かす会”が設立されましたが、地価が高い事などもあり所管している東京都との交渉も思うように進んで いないと聞きます。古くても文化的に優れた建物を大切に使い続ける事の意義を改めて感じるこのごろです。(桑山 直子)
あとがき
今年最後の発行となりました。いつも同じことやってないかな?意欲はあったけれど・・来年こそは・・・YOKO