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■目的・法制度
○平成13年頃から、NPO活動の活発化や一部の公益法人の不祥事などを受
けて、 従来の公益法人制度の見直し作業が開始されました。
○具体的には諸々の作業を経て、平成18年、公益法人改革3法(さまざまな略
称がありますが、ここでは公益法人法、一般法人法、関係整備法と略称し
ます)が公布され、平成20年12月から施行されました。国の説明パンフによ
れば、新たな公益法人は、真に公益目的に純化した活動を行っていれば、従
来以上に適切な事業環境を得ることができますし、一般法人は監督官庁の
縛りをはなれた自由な活動が可能になるとされています。
○これらの法律の規定は、新たに設立される法人だけではなく、既存の法人に
も適用されることが特徴です。そして、平成25年11月末の移行期限までに公
益法人か、一般法人かの選択を行い、移行の認定又は認可を受けないと、
解散させられることになります。このことは、当然、社団法人神奈川県建築
士会も例外ではありません。
○公益法人改革3法は、法律本文だけでも相当なボリュームがある上に、建築
基準法と同様、施行令、規則、告示まで参照しないと、具体的な規制や手続
の中身が見えない構造になっています。さらに、告示以下の「ガイドライン」や
「FAQ」(よくある質問と回答)まで遡らないと、法人の移行に関する実務的な判
断ができない状況にもなっています。
○とはいえ、ここであきらめては前に進めませんから、内閣府の作成したパン
フを以下に示します。パフレットの本文の他、コメントもあわせて記載しまし
たので参考にしてください
「新公益法人制度の概要」(内閣府公益認定等委員会事務局)
注目情報 法令やパンフ、さらに全国の最新認定・認可状況は内閣府の
「公益法人information」サイトから得ることができます。
https://www.koeki-info.go.jp/pictis_portal/common/portal.do
■移行認定・認可の状況
1. 一般的な状況
○既存の法人数に比べて、公益法人への移行認定や一般法人への移行認
可を得た団体の数は、内閣府所管、各都道府県所管とも、まだ数%にすぎ
ません。
○また、芸術文化系や防災防犯系、奨学金の支給を目的とする団体のように
「公益目的活動」の定義に合致しやすい分野では、「公益財団認定」「公益社
団認定」を得ているものが目立ちますが、いわゆる業界団体系ではまだ数え
るほどしかありません。建築士事務所協会、建設業協会など、建築士会に近
い団体の認定・認可実績は、全国でも今のところゼロです。
○移行認定・認可の数が少ないのは、各都道府県の公益認定審議会での審
議も含めた申請手続に相当の時間を要すること、認定基準やその運用が
必ずしも明確ではなく、様子見の傾向も出ていることを指摘する向きもありま
す。
2. 各都道府県建築士会の状況
○外部に公表しているホームページなどで、「公益社団法人を目指す」ことを
明らかにしているのは、中部地方の愛知・岐阜の2県。ほか、三重、静岡、
福岡の各県も、そのような方向と報じられています。その他の都道府県の
建築士会については、現時点では公益社団・一般社団のいずれを目指すの
か、対外的には明らかにされていません。
○最近の状況については、下記の「全国の状況は?」で把握できたものを紹
介していきますが、H22.9.12現在で認可を取得した士会は依然ありません。
■移行認定・認可申請にあたっての課題
○公益社団、一般社団に共通の課題
・建築士会のような組織にとって、公益社団、一般社団のいずれを選択
しても生じる主な課題としては、
・本会と支部の関係整理
が考えられます。
・「本会と支部の関係整理」とは、
(1)本会と支部の会計の一元化、いわば連結決算が求められる
(2)理事を兼ねる支部長の選出は総会事項となる
といった新制度の条件を、どうクリアするかという課題です。
○公益社団を選択した場合の課題
・「公益目的事業比率が1/2以上」の条件の充足が課題となります。問題
は「公益目的事業」の定義のハードルが高いことです。収益を上げなけ
ればよいということではなく、例示されている20数種類の分野に該当し
なければなりません。
・また、「公益事業」「共益事業」「収益事業」の3区分のとおり、会員のみ
を対象とする福利厚生事業は「公益事業」とはみなされません。
○一般社団を選択した場合の課題
・移行時点で保有している預金・債券等の財産の扱いが課題となります
基本的には、それを「公益目的事業」に支出することが義務づけられま
す。内部に留保し続けることが許されるのは、退職金引当金のような限
定された使途の費用に限られています。 |
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神奈川県建築士会の目指すべき方向は |
■今までの検討経過
○総務企画委員会では、
H21.. 8.16 H21年度第2回委員会
H21. 9..17 第3回委員会
H21.10.20 第4回委員会
H21.12.15 第6回委員会
H22. 3.16 第9回委員会
H22. 4.13 H22年度第1回委員会
の6回にわたって討議を行い、事務局職員も、県の担当課が行った個別相談会(H22.2.16)、説明会(H22.3.11)に参加し、情報収集や法解釈の確認等に努めました。さらに、H22.5.27の通常総会での議論も踏まえ、
H22. 6.15 第3回委員会
H22. 7.20 第4回委員会
H22. 9.21 第5回委員会
H22.10.12 正副会長・常任理事会への中間報告
H22.11.16 第6回委員会
H22.12.21 第7回委員会
の他、11月下旬から開始した各支部との意見交換を通じて、本会・支部関係などを中心
に検討を進めています。
■公益社団、一般社団のメリット・デメリット
○公益、一般のいずれを選んでも、長所と短所があります。また、建築士会
の今後をどのような方向とするかによっても、その評価は異なってきます。
○委員会の中でも、さまざまな意見が出ました。次の資料は、討議の素材と
して提出されたメリット・デメリットの比較表です(評価の項目別に配点を行
い、総合評価方式で合計点を比較していますが、これはあくまで試算であ
り、委員会の結論を意味しないことに留意ください)。
「公益法人・一般法人のメリット・デメリット比較表」(第4回委員会資料)
■公益目的事業の比率はどうか
○本県建築士会の実際の収支に照らして「公益目的事業比率」を考えた場
合、いくつかの問題が出てきます。もちろん、本会・支部を通じて一般県民
や市民を対象とした行事など、明らかに「公益目的事業」とみなされる事業
も多数行われていますが、建築士会会員を対象とする「共益事業」も活発
です。
○しかし、「共益事業」は「公益目的事業」とみなされません。また、行政から
の委託事業は無条件で「公益目的事業」とされるかという点でも、内閣府
の見解(FAQ)では、必ずしもそうではないという用心深い解釈が示されて
います。
○次の表は、H21年度予算の事業費を、仮に分類してみたものです。これに
よれば、「公益目的事業」とみなされる確率の高いものの合計は50%に達
せず、グレーゾーンにあるものが4割近く残ります。これらのグレーゾーンに
事業が、どのように扱われるかは、大問題です。
「H21年度予算事業費中の公益目的事業費率推計」
■目指すべき方向について
○H22.5.27のH22年度定期総会には、以上のような制度の現状・本県建築
士会の実状を踏まえた「公益法人改革への対応に関する基本方針案」が
議案として提案される予定です。
○公益社団法人の認定を受けるためには、あまりにも不確定要素の多すぎ
る制度及び運用の現状(いったん公益法人となった場合、認定基準を満た
せなくなると認定取り消し=解散に追い込まれるリスクもあります)、
H25.11のタイムリミットまでに残された時間の制約(会計のあり方も抜本的
な見直しと試行が必要です)等を考慮し、当面は「一般社団」への移行を目
指して検討を進めることが、その骨子です。
○このことは必ずしも未来永劫「一般社団」である続けると決定するわけでは
ありません。一般社団となった後、条件を整えて公益社団の認定を得る2
段階方式もあり得ると考えられます。
○いずれにせよ、基本方針を定めて活発な議論を重ね、会員の総意を踏ま
えて次のステップに進めるよう、会員の皆さんのご理解・ご協力をお願い
します。
□県内の状況(県のアンケート調査結果−H22.9.1公表)
神奈川県がH22.7〜8に実施したアンケート調査の結果が「公益法人インフ
ォメーション」に掲載されました(県のホームページにはありません)。概要は
○県内対象法人数 637 有効集計数 490 回収率 77%
○公益法人志向 37% 一般法人志向 21.7% 未定・未回答 34.2%
○H22申請予定 14% H23予定 39% H24予定 26%
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